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新幹線で [父親]

もうだいぶ前の事のように感じられるが、6~7年前、父親がまだ食べることがそんなに大変ではなかった頃に
私が大人になってからは初めて、両親と3人で1回だけ旅行をした。
(妹が結婚する前、妹と両親と私の4人での旅行は何度かしたことがあるが)。
新潟県と山形県の観光地や温泉地などに2泊3日で行った。
旅行は初めて行く所だったし、自然が気持ち良くて、歴史のことも見学出来たりして、
思ったよりもとても楽しかった。
沢山歩いて、美味しいものを沢山食べられたことも満足した。
帰りの新幹線に乗ったのは、夕方だった。
席は3人が横一列で、私は何も言っていないけど、窓際に座らせてもらった。
結構疲れていて、母親とお土産に買った枝豆のお菓子を食べたりしていた。
周りに乗っている人たちは背広を着たサラリーマンっぽい男性ばかりだった。
父親は通路側に座り、缶ビールを飲んでいた。
そしたら、父親が缶ビールをひっくり返して落として通路にこぼした。
すると3列の席の真ん中に座っていた母親が立ち上がり、通路に出てポケットティッシュで
こぼれたビールを拭き始めた。母親と父親の持ってきたティシュは1個ずつだった為、
私はバックから、念のために沢山持って来ていたポケットティシュを1つずつ出していた。
すると、通路の反対側に座っていた50代くらいの男性が「良かったら使ってください」と言って、
ポケットティシュを母親に差し出した。
それを見た私は「良い人だなぁ」と感激し、温かい気持ちになったのに、母親はそのティッシュを
「ありがとうございます。結構です」と言って、受け取らなかった。
私は「え、なんで?」と思った。ティッシュが足りなくなるかも知れないのに。
私の持ってきた10個くらいのポケットティッシュを全部母親に渡したら、丁度こぼしたビールを
全部拭き終わった。母親も大変だったと思うが、それを見ていた私も疲れていたからかなんだか
ムカついた。母親が席に戻って、私にティッシュのお礼も言わなかった母親と、自分がこぼした
ビールを母親に拭かせてお礼も言わない父親に対してだと思うが・・・。
私は「お父さんが帰りの新幹線の中でビールを飲むからこぼしたんでしょ」と、
静かな新幹線の中で、結構大きな声で言った。
周りが悪い空気になったような気がした。
母親が「そんなことを言ってはいけません」と言った。
父親の顔を覗き込むと、しょんぼりと落ち込んでいるようだった。
一瞬、父親が可哀そうに思った。
でも私は疲れていて怒っていたので、謝らずに、「ふん」、と窓の外を見ていた。
しばらくして車内販売のお姉さんがワゴンに缶ビールなどを沢山積んで通路を通って行ったのを
私は恐る恐る見ていたが、周りの人は誰もビールを買わなかった。
周りのサラリーマンっぽい男性たちは、仕事の帰りで、年齢的にも奥さんや子供がいそうな感じの人たちで、
「お父さん」と思われた。
ヤバいと思って見ている私をさっきポケットティッシュを差し出してくれた男性が興味深そうに
見ていた。
父親を見ると、なんとまた懲りもせずに缶ビールを飲んでいた。
この辺りでビールを飲んでいるのは父親だけで、
私が父親を睨んでいるところも通路の反対側の男性は見ていた。
母親が私に「ビール飲む?」と訊いてきたが、私はさっき父親に言った手前、ビールを飲むことは
できないと思い、「飲まない」と言って、枝豆のお菓子を時々食べていた。
その後私は殆どの時間を車窓を眺めたりしていたが、ふと車内をみたら、私たちの列の反対側の窓際で
若い男性がビールを飲んでいたのを見つけ、「あ!」っと思った。ビールを飲んでる・・・
考えてみると、その人はあの後で途中から乗ってきたんだ。私が言った事を聞いていないからビール飲んでいるんだと思った。呑気そうにつまみまで食べてる。
また、父親に目を向けたら、まだ、ビールを飲んでいた。
そういった私の言動を通路の反対側に座っていた男性は、興味深そうにチラチラ見ていた。
そういえば最初から、私がテッシュをバックから1つずつ取り出していたのも、私が「お父さんが」発言
した時の様子も、見ていた。
この家族ってなんだろう。誰が悪いのか。とか、いろいろ観察していたんだろうな。
その男性、出世していそうな人だったので、たぶん人を見る目もあるんだろうなと思った。
でも、その人は私にとても注目していたのが、ちょっと気になった。
私に特別な何かがあるということかな、と後に思ったのだが・・・
たぶん、仕事の帰りの新幹線の中で、特になにもすることがなく暇だったので、少し珍しいものを
見ていたのかも知れない。


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